OUT OF IRELAND アウト・オブ・アイルランド
The Hit Songs & Artists of Irish Music 〜 From A Whisper To A Screamヒストリー・オブ・アイリッシュ・ロック
2003 （Eagle Vision）
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2000年にアイルランドのテレビ局が作成した音楽ドキュメンタリー番組（45分x3回シリーズ）で、 2003年にビデオ化されたもの。2005年に日本語版DVDがでた。
ビデオは3巻に分かれていたが、こちらは1本にまとめてある。内容は変わらないが番組の終わりにちょろっと流れたミュージシャンの昔の映像（インタビュー等）はカットされている。45分番組3回分を一気に繋げてあるので結構なボリュームになっているが、内容としては戦後のアイルランドの音楽シーンの外郭をなぞるようなもので、そんなにマニアックなものではなく、気楽に楽しめる。
年代を追って、米英の音楽に影響を受けつつ、地元のトラッド音楽を絡ませつつ、アイルランド独自のポピュラー／ロックシーンが形作られていくさまを描いている中で、様々なミュージシャンの演奏シーンやインタビュー映像などが豊富に取り入れられている。それらだけでも興味深い。特にVan Morrison はThemの頃の話もあるし本人がコメンテーターとしても登場。あとは当然のようにTaste 〜 Rory Gallagher 、Thin Lizzy 〜 Phil Lynott もでてくるし、それにからんでの Skid Row も登場。他にはトラッド絡みでのHorslips やDubliners、Clannad、さらにSinead O'Connorなど。そんな中、The Boomtown Rats の功績が大きく取り上げている。Band AidやLive Aid のことにも触れられているが、それ以前のRatsの位置付けのようなものにも言及しているし、Bob Geldofは全編に渡ってコメンテーターとして登場し、あれこれと語る。もちろんU2は外せなくてBonoとEdgeがでてくるし、マネージャーもあれこれと語るし、本編の最終的な結論として、アイルランドの出世頭としてU2を持ち上げるような感じになっているが、まぁそういうのが事実なんだろうなと納得できた（あと、もちろんヴァンやロリーにも敬意を払っている）。
司会進行役はアイルランドの音楽誌「Hot Press」の編集長。穏やかな語り口がなかなか良い。
アイルランドというとなんとなくイギリスと一緒くたに考えてしまいがちなのだが、このドキュメンタリーを見ていると状況としては日本とそんなに変わらなくて、凄く閉鎖的な島国で、かつてはカトリック教会の影響が強くて、田舎で、最初は米英の真似事からはじまって、テレビの普及で急激に都会化が進んだけれどもまだまだで．．．と、なにやら近いものを感じたりもする。
Paul Brady（フォーク歌手）が話していた「（僕らアイリッシュは）ゼロからの出発ではなく-10からって考えないとダメなんだ。特にイギリスではね。」という言葉が印象的。
ロリーの映像は、テイスト時代のものからソロ時代のものまでいろいろ出てくるが、最後の方に葬儀の様子が映るのがなんとも切ない。ロリーをメインに見るよりも、アイルランドという国の音楽的な背景であるとかそういうものを理解するのに役に立つドキュメンタリー。お薦め。